[ハッセル]あれから12年の歳月が

春風ひとみ様 ハッセルにて

 TVで報道されている阪神大震災当時の映像に、不安で眠れなかった夜々、ヘリコブターの旋回する音など、まだ生々しく思い出されます。
当時小学1年生だった孫がもう大学生です。震災後、家族がひとかたまりになって寝ていましたが、ふと気付くと孫の頭に「円形はげ」が出来ているではありませんか?小さい子供の心にも、どんなに大きなショックを受けた事でしょう!

幸いハッセルハウスはひび割れ程度の被害ですみましたので、すぐに馴染みの大工さんに修復をお願いし夏には営業を再開したのです。


しばらく経ったある日、久し振りで訪ねて下さった方、
いつも静かに微笑まれながら御夫婦で二階に上られて、お茶の時間を楽しんで行かれる方、お聞きすればモーツアルトが大好きとの事、それで音楽の継ぎ目が来ると、モーツアルトにそっと換えたのでした。
 「あら今日は奥様はいらっしゃいませんの?」とお聞きすると、
「もういないのです」と言われる。びっくりして言葉のない私。
地震の時丁度芦屋の実家に帰っていたのです。」
何をしていいやら分からず、2つコーヒーをお入れして、お祈りしたのです。
その後一度駅のプラットホームでご主人様のお姿をお見かけしましたが、もう40代後半になられるのではと思われるお背中の寂しさにお声を掛ける事が出来なかったのです。
今はどの様に暮らされていられるのでしょうか。
髪を内側にカールされてピンクのコートが良く似合われ楚々とされたあのお姿は
忘れる事は出来ません。


そして8月思いがけなく宝塚歌劇生の時よくいらして下さった
春風ひとみ様から一人ミュージカル[壁の中の妖精]に招待いたしますとのお電話。久々の夫婦での外出になりました。
被害に逢われた阪神地区の方々の心を元気にするためだったのです。
内容の深いお芝居に泣き笑いして人の優しさにも触れたのです。
春風様ありがとう御座いました。    京子